『田園の詩』NO.55 「競い合うお米たち」(1996.10.8)


 豊娘・一目惚れ・恋心…などと書けば、純愛小説の中から拾って来た言葉のようです
が、これを≪とよむすめ≫≪ひとめぼれ≫≪こいごころ≫と表記し、更に≪ひのひかり≫
≪きらら≫≪コシヒカリ≫≪ササニシキ≫と続けば、もう何のことか分かると思います。
そう、お米の名前です。

 以前は≪農林22号≫などと名付けられていたのに、最近は若々しい女性をイメージ
した名前が流行しているようです。

 台風が、昔は≪ローズ・ジェーン・メアリー…≫などと、外国の女性の名前で呼ばれ
ていたものが、今では≪17号・18号≫となったのと、ちょうど逆の現象です。

 山里は、いよいよ実りの秋を迎えようとしています。少し色づいた稲穂は風が吹くと、
サラサラと音をたてて揺れます。朝夕の犬の散歩の途中にこの音を聞くと、心まで
爽快になります。


          
     女房が、朝の犬の散歩から帰って来たところ。こんな家の近くでも
      イノシシ対策の網をしなくてはなりません。「網がなかったらいい写真」
      と女房は悔みます。ちなみに『NO.36』(←クリック)は同じ場所の私の
      散歩の写真です。 (08.9.27写)



 ところで、散歩しながら、一枚一枚の田圃に違いのあることに気付きました。同じ頃
植えたのに、一方は熟れかかっているのに他方はまだ青かったり、背が高いのもあれ
ば低いのもある、といった具合です。

 そこで、農家の人に尋ねてみたら、「稲の種類が違うんじゃ」と教えてくれました。
そして少し照れ臭そうに、最初に挙げた稲の名前をいってくれたのです。

 こんなに多くの種類の稲が植わっているとは知りませんでした。数年前までは≪収量
が多くて、倒れにくい≫一品種をほとんどの農家が作っていたようですが、≪味の良い
お米≫を求める時勢に応えて、次々に新しい品種が開発されました。

 現在、ちょうど品種の切り替え時期に当たっているようです。味が良く多収量で倒れ
にくい…といった三拍子も四拍子も揃ったお米は果たしてどれなのでしょうか。

 今年は天候に恵まれ、どの品種も順調に育ったので、比較するには最適の年だと
思います。いよいよ稲刈りも始まります。結果やいかに――。

 実際にお米作りにタッチしてない私にも興味津々です。  (住職・筆工)

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